2017年3月16日(木)



 朝9時半。このホテルを11時に出て、スワンナプーミ空港には午後のわりあい早い時間に着き、夕方5時にキャセイ・パシフィック航空の飛行機に乗り、5時40分発、香港で乗り換えて、成田には明日の06時ごろ着く。移動にほぼ1日かかるわけね。

 今回の滞在でずっと思っていることなのだが、日本はある種の強迫観念にとらわれていないだろうか。そして、排斥要素のような形で、街が混乱しているのではないか。

 バンコクにたった7日間いるだけなのに、ずいぶん長く、ゆっくりいたという感覚がある。この街には、例えば美術館や画廊は少ない。今回の滞在では見かけなかった。どうやら、昨年10月に逝去したタイ国王に対する庶民の尊敬の念は、たいへんなものらしい。美術と言えば仏教美術のたぐいが街のあちこちにあり、服屋さんで売っているTシャツにまで国王のポートレートが印刷してある。

 (帰国後、「国立美術館」なるものが、ぼくのホテルのすぐ近所にあることを知った。見に行けば面白かったんだろうけど、今回の旅行のテーマが「バンコクの街を見に行くこと」で、行ってみたら街自体かなりインパクトがあったし、アユタヤ遺跡などに出かけたりで、美術館のことは忘れていた。まあ、こんど見に行きましょう。3月24日記す。)

 音楽はどうかと言えば、いわゆる現代音楽はタイにもあるが、なにぶん、ぼく自身が世界中の現代音楽から距離を置いているので、積極的に探そうという気持がなかった。従って現代音楽は聴かなかった。カオサン通りで聴こえる音楽はヒップホップみたいなもので、ぼくはライヴハウスには行かなかったが、ジャズのようなものをやっているようだ。ほかは、美術の場合と同じで、寺院で聴こえる、仏教音楽とでもいえるような音楽。だからといって、ぼくは別に自分がやっている音楽について焦って反省しようとは思わない。いままで通り、自分の音楽をやっていていいだろう。バンコクにしばらくいたことで、今後、自分の音楽や生活のやり方になんか変化が起きるかなあ。

 また来よう。ここなら日本からわりあい近い。

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 そういうわけで、午後3時20分。スワンナプーミ空港でチェックインして時間をつぶしてます。ランブトリ通りのホテルが空港までワゴン車を手配してくれていた。表通りまで、お兄さんが運転するバイクの後部座席に乗って移動、その後ワゴン車に移った。こういう段取りだとは知らなかったので、まさかバイクに重い荷物を積んだまま、空港まで走るんじゃないだろうなと、少々心配だったが、まあ、危険なことはない。

 2010年の春、韓国・ソウルのインチョン空港の中でヴィデオカメラを回していたら、警備員さんが「撮らないでください」と言ってきたことがあった。それで今日も、写真は構わないとしても、DVカメラは空港の建物の中では使わない。ドアの外にある喫煙エリアならいいのではないかと思って、少し撮影していたら、こちらにも、他人のヴィデオに写るのは嫌だという男性がいて、不快な顔をした。そういうわけでヴィデオをとるのはやめた。まあ、写真を撮られるのも嫌い、という人も案外多いから、ごみごみした駅などではヴィデオなんか撮らないほうが賢明かもしれない。ただ、こういう場合、自分は不快だという意思表示の適当なやり方があると思いますね。この旅行の最初に、JR東大宮駅でいきなり怒鳴りつけてきたおっさんなんかは、やっぱりよくないと思うな。セキュリティの観点から、ぼくが他人さまの領域に踏み込んだことはこちらの配慮不足なのだろうから、悪かったかなとは思う。でも、それを「いやだ」と断るのも、しかるべくマナーが必要だと思う。どうでしょうね。まあ、いろんな人がいるから、相手が嫌がることは慎んだほうがよいですよ。

 午後4時40分、荷物検査と出国手続きをして、ゲートG3に来ました。あと20分ほどで搭乗時間だから、朝11時にホテルを出てよかったと思う。こういうのはちょっと時間が余るぐらいでちょうどいいようです。荷物検査や出国審査は気を遣うもんですが、まあ、自分が悪人でも犯罪者でもないことがはっきりわかるから有益だ、ぐらいに考えておけばいいんじゃないか。こういう場所のお役人さんたちはどこの空港でもあんまり愛想がないが、以前、オーストラリア・シドニーの空港の荷物検査は雰囲気が明るかった。むしろお役人さんたちのほうが搭乗者に気を遣って、つとめて笑顔で接してもらったことをよく覚えています。

 今回の旅行の終わりが近いんでしょうが、実はあんまり「旅が終わった」という気分ではない。続きがあるような気持です。引き続き、自分の日常も含めて、きっとさまざまな旅を続けるんでしょうね。

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 まあそういうわけで、機内食を食べて、いちおう満腹。2種類の機内食があるが、女性の搭乗員さんの声がよく聞こえず、無難に「チキン」にしたところ、チキンが入ったグリーンカレーだった。

 キャセイ・パシフィック航空の CX-708 は、日本の新幹線程度の揺れで、しばらく座席シートを締めていてねと言われたが、機内食を食べて、座席ベルトを外していいですよ、という合図が出たころには、香港まであと51分という距離だった。タイでは Chang というビールがポピュラーで、昨日、旅行の最終日は Leon というのを飲んだが、この機内食ではハイネケンを少し飲んでます。なんでドイツのビールなのか、よく知らないが、そんなことは知らなくていい。

 飛行機が飛び立つと、まもなく日が暮れてしまい、外は暗いです。が、遠くにまぶしく光る星が見える。月かなあ…。先月、サン=テグジュペリの『夜間飛行』を読もうと思って図書館から借りたが、読まないで返した。この作者は飛行士で、夜間飛行の魅力を語る飛行士の談話から始まる小説なのですが、夜間飛行について、さっぱり興味がわかなかったから読まなかった。しかし、ぼくは乗客として何回か深夜のフライトを経験している。なんで深夜に飛行機が飛べるんですか、ということに興味が出てきたのですよ。これは、どうして新幹線が時速250キロで走れるんですか、というのと、問題は同じだと思ったから、サン=ペグジュテリの『夜間飛行』、読んでみようと思う。

 ライト兄弟がどうして飛行機の発明を思いついたのか、詳しく知らないが、ものが空を飛ぶというのは、凧揚げと同じ原理なのかな、と思った。このぼくの興味の方向が合っているとすれば、飛行機というのはとても自然な物理を充たして飛行しているということになるなどと、ヒマに任せて考えていた。乗客として、フライトを楽しんでいますが、ちょっと予備知識があったほうがより楽しめるような気分になってきたんです。もちろん専門のことは機長さんや搭乗員さんにお任せする。

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 香港空港、いま香港時間で夜10時24分。43番ゲートで成田行きの飛行機を待っている。いちおう待ち時間は3時間40分ぐらいなんだけど、キャセイ・パシフィック航空 CX524 成田行きは17日の01時05分搭乗で、いまから2時間40分ぐらいです。空港内はしーんとしている。人が少ない。コーヒーとか買うのは米ドルなんだそうで、ムリして飲まなくていいから、無料の氷水を飲んでます。乗り換えゲートにお兄さんが立っていて、日本語で「体温検査」と言って、ぼくの額に棒のようなものを軽く当て、「日本語これひとつしかわからない」と、これも日本語で言ったので、「おつかれさま」と日本語で返した。

 飛行機待ちの間、やっぱりコーヒーが飲みたくなり、スターバックス・カフェがあったので、アメリカン・エクスプレスを使ってカフェ・ラテを買う。37香港ドル。これは日本のスタバよりちょっと安いくらいか。

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 香港空港を現地時間17日の01時20分に出発したキャセイ・パシフィック航空 CX524 成田行きは、ほとんど揺れないで安定して飛んでいる。ちょうどね、新幹線がトンネルの中を走っているような感覚です。搭乗員さんたちの挨拶が「おはようございます」で、ツナサンドウィッチとか果物が出た。可愛い女性アテンダントさんがいます。本来は寝てる時間だけど、いま日本時間02時45分で、あと3時間ぐらいで成田に着くので、寝るには中途半端な時間の長さです。香港時間の01時20分に出発して、アナウンスによれば飛行時間は約3時間20分、日本のほうが1時間早いから、成田空港には06時ごろ着く、という計算でいいらしい。




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